プロローグ どうしたら…今より強くなれる? どうしたら…お前に勝てる? 第一回ワールドポケモンマスターズで、ユイに敗れ……そして、ブレイク団やロケット団といった悪の組織達に、自分の力が及ばない現実をつきつけられ、パシオを出た 「ワン!ワン!」 「よくやった、イワンコ」 パシオを出て数日、修行の旅は順調に進んだ。パシオに居た頃に強いトレーナーの方々に揉まれた甲斐はあったようで、一般トレーナーに挑まれたポケモンバトルには今のところ全て勝てていた 「この調子でどんどんバトルを重ねれば、近い内にルガルガンに進化できるぞ」 「イワン♪」 パシオを出てからはまだそんなに時間は経っていない。今の段階じゃユイにはまだ全然及ばないけれど、旅を続ければいつかは…そう考えていた矢先のことだった 「マリルーっ!」 「きゃーーーー!泥棒よ!」 住民の大きな声を聞いて、後ろを振り返ってみるとマリルを連れて逃げる男が居た 「追うぞ、イワンコ!」 「ワン!」 「おらどけ!」 「リルリー!」ジタバタ 「ヒッ…」 「待て!」 「ワン!ワン!」 イワンコと共に泥棒を追いかける。マリルを担ぎながらにしては速いスピードで逃げてはいたけれど、追いつけないほどという訳ではない。追い続けて犯人との距離は確実に縮まり出した 「クソ!こうなったら出てこいハッサム!」 「ハッ」 走るだけでは逃げ切れないと判断したのか泥棒はハッサムを繰り出した。ポケモンバトルか、上等だ! 「やるぞイワンコ!」 「ワン!」 「イワン…」バタリ 「イワンコっ!?」 「ハァッ……ハッ……」 「チッ…手こずらせやがって!ほら、さっさと賞金寄越せ!」 「っ!………ああ」 「よし、逃げるぜ…」 「そうはさせないわ!ガーディかえんほうしゃ!」 「ばう!」 ボウッ…!と炎がハッサムに直撃。どうやら、バトルが終わったと同時にジュンサーさんが駆けつけたようだ 「…ゆっくり休んでくれイワンコ」 イワンコをモンスターボールに戻しポケモンセンターへと向かった。後は【正義の味方】の番だ。一般人の自分は、大人しく立ち去るしか無かった… まただ…また、悪い奴に負けた… 悪い奴らを許せない…どれだけそう思ったところで、自分の力が足りなければ悪い奴らには敵わない… 自分がパシオでやってきたことは、なんだったんだ?自分がパシオで学んだのは…自分には悪い奴に勝つ力は無いってことなのか? 自分は、ユイにはずっと敵わないのか? ・・・ここが、旅の終わり時なのか? (いいのか?強くなることを諦めて) …自分にはそんな力がないんだ (本当に諦められるのか?) …どれだけやっても、力が付かないんだ (どんなことをしてでも強くなるんだろ?) …やれることは、やった (本当にそう言えるか?) … (まだやってないことが、あるんじゃないか?) …………… 「お待たせしました。お預かりしたイワンコは、元気になりましたよ」 「!」ハッ 「イワン!」 「またのお越しをお待ちしてます」 「…ありがとうございます」 ジョーイさんの声と共に現実に戻る。傷ついたイワンコが回復したようだ。ジョーイさんにお礼を言ってポケモンセンターを出る 「なあ、イワンコ…」 ポケモンセンターを後にしてから、イワンコに問いかける 「……何があっても、一緒に来てくれるか?」 「………自分は、強くなりたいと思うことを、まだ諦めないでいいのかな?」 「…イワン!」 イワンコは一声、大きく鳴いた。そして、その目は鋭かった 「…ありがとう」 「行こうか。【俺達】の旅の始まりだ」 「イワン!」 ーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーー ーーーーーー ーーーーー ポケットモンスター・リベンジ 第1話(前編) 『間も無く、クチバシティです』 ポーーーーーーーーーーッ 「貴方のポケモンをお預かりしますね」 どんなことをしてでも、ユイを凌駕する そう決めて、かつての【自分】から【俺】へと変わり1年の時が過ぎた。俺達は遂に来た。カントーの地に かつてWPMでユイと共に優勝を分かち合った3人のポケモントレーナーの、内2人がジムリーダーをやっているカントー地方。 まずはユイとWPMで優勝を分かち合ったカスミ、タケシのジムリーダー2人を倒し、次はイッシュ地方のメイを… 「あれ?キリヤさん?」 「…お前は」 ……どうやら、イッシュ地方まで出向く手間は省けたようだ 「お久しぶりですね!」 「ああ」 「キリヤさんはどうしてカントーに来たんですか?」 「…修行だ」 「ははぁ…なるほど。パシオを出てもストイックに鍛え続けていたんですね」 「メイの方は、どうしてカントーに?」 「アタシは観光旅です!」 メイ…ユイと共に第一回のWPM優勝を分かち合った、イッシュ地方出身のトレーナーだ。 イッシュ地方まで出向くつもりでいたからこのカントーで一気に3人ともバトルすることが出来るというのは嬉しい誤算だった 「メイ、この後時間あるか?」 「ほえ?」 「…ここはポケモンセンター。回復して貰ったらちょうど互いのポケモンは万全の状態同士」 「ははぁ…なるほど。つまりアタシはポケモンバトルを挑まれてる、ということですね。いいですね!やりましょう!」 「お待たせしました。お預かりしたポケモン達は元気になりましたよ」 ジョーイさんからポケモンを受け取り俺達は外へと出た 「使用ポケモンの数は特に制限無しだ」 「6対6のフルバトルですね!」 「フッ…6体も使う事はないかもしれないがな」 「お、強気に出ましたね」 「それだけの修行を重ねて来たからな。見せてやる。俺とルガルガンのこの1年間の成果!」 「ガルっ!」 「あっ!イワンコが進化したんですね!」 メイ、まずはお前を蹂躙しユイを凌駕する足がかりとしよう 「出てきてジャローダ!」 「ロー!」 1体目からくさタイプのジャローダか。いわタイプのルガルガンにとって相性は不利だな 「先手必勝です!ジャローダリーフブレード!」 「シャァァァ!!!」 「ルガルガン、かげぶんしん」 「ガル!」 ドドドドン!!! 「ロオオオっ!」 「ガッ!は……」 ポン! 「分身!?」 「すなあらし!」 「ガアアアア!!」 ブワッ!!! かげぶんしんでジャローダのリーフブレードをかわしルガルガンにすなあらしを指示した 「わっ!砂埃が目に…」 「かげぶんしん」 ドドドドン!!! メイが目を擦ってる隙に防御を固める 「…知ってると思うがすなあらしはじめん、はがね、そしていわタイプ以外のポケモンの体力をじわじわと奪う」 「くさタイプのジャローダは消耗していく訳ですか、ははぁ…なるほど…わっ、また砂埃が…」 「……ですが、ジャローダには相手の体力を吸収する技があるんですよ!ギガドレイン!」 「ジャロ」 シュルルルルル 「ガッ!?」 ポン! 「これもぶんしん!?」 「自慢の回復技も、ぶんしんに当てると不発に終わるようだな」 「ぐぬぬ…」 くさタイプの技はいわタイプに効果は抜群、だがそれはあくまでも攻撃が当たればの話。 当たらなければ、相性なんてなんてことはない 【メイSide】 「ジャローダ!リーフストーム!」 「シャァァァ!ロオッ!」 「ガルっ…」 ポン! 本体が捉えられない!キリヤさんはこの1年で本当に強くなったみたい… すなあらしで視界が悪くなってる中で大量の分身から本体を見破らなければいけない… キリヤさんの戦術は見事です。けど、アタシだってこのままやられっぱなしじゃないんです! 「ジャローダ!リーフストーム!」 「シャァァァ!ロオッ!」 「ルガルガン、まもる!」 「ガル!」 キイン! あのルガルガン、まもるも覚えてたんですか!キリヤさんは本当に防御を固めて修行を重ねて来たんですね…でも! 「ジャローダ!リーフブレード!」 これだけぶんしんを増やしてる中わざわざまもるを指示したんだ!つまり今まもるを使ったのが本体! 「シャァァァ!!!」 「くらえ!」 「ガッ…」 「形勢逆転!さあ、ここから反撃です!」 ポン! 「あれぇ!?」 【キリヤSide】 ポン! 「あれぇ!?」 ぶんしんにまもるを使わせてメイとジャローダにぶんしんを狙わせ攻撃を外させる。 本体を攻撃したと思ったら分身だった、その動揺した一瞬の隙を突く! 「かみなりパンチ!」 「ガアアアアア!!!」 ジジジジジ!! 「ジャアアッ!!?」 「ジャローダ!?」 ルガルガンのかみなりパンチは、ジャローダの身体を吹き飛ばした かみなりパンチはでんきタイプの技だから効果はいまひとつ、大きなダメージは見込めない。だが俺達にはある程度距離が空くだけで十分! 「かげぶんしん!」 ドドドドン!!! 元よりこちらは持久戦、長期戦を覚悟したバトルスタイルで1年間鍛えて来たんだ。少ないダメージでも、蓄積させていければそれはやがて大きなダメージになる!それに、このバトルスタイルには… 【メイSide】 「かげぶんしん!」 ドドドドン!!! あっ!またかげぶんしん! キリヤさんが撒いたエサにまんまと引っかかった隙にまたぶんしんの数を増やしたルガルガン…一撃でも当てられればこっちが有利になるのに…その一撃が遠い… ただでさえぶんしんがいっぱい居るだけでも厄介なのに、その上このすなあらしでダメージが溜まるからあまりのんびりはしていられない… 「……ん?」 「…止んだか」 10分くらいかな?には、すなあらしは止んでいた。ここがチャンス!今ならジャローダにダメージが蓄積するようなことはない!なんとしても本体に攻撃を当てるんだ! 「ギガドレイン!」 お願い、本体に当たって! 「ガルっ…」 ポン! 「すなあらし!」 「ガアアアア!!」 ブワッ!!! …千載一遇のチャンスを逃しちゃった 【キリヤSide】 「ジャローダ!リーフストーム!」 「シャァァァ!ロオッ!」 「ガルっ…」 ポン! 「かみなりパンチ!」 「ガアアアアア!!!」 ジジジジジ!! 「ジャアアアッ!!」 バタリ…… 体感で30分くらいか?すなあらしのダメージとかみなりパンチの連打でジャローダは倒れた 「まずは一体…」 「…まだ1体です。勝負はここから!」 「出てきてルカリオ!」 「カーリオ!」 「ルカリオ、はどうだん!」 「ルオ!!!」 バシュン! 「まもる!」 キイン! …今のまもるは、出させられたまもるだ これだけのかげぶんしんもルカリオのはどうの前では意味がないか… 「ルカリオははどうで本体を見分けられるんです!いくらぶんしんが増えても、ルカリオの前では使い道は無いですよ!」 本体が見破られればぶんしんは使い道がない、か…それはどうかな? 「ルカリオ、ボーンラッシュ!」 「アオオオン!」 「みがわりになれ!」 「え!?」 「ガル!」 「ルガアア!」 俺の指示と同時にぶんしんが3体、本体の前に立ち塞がる。この1年に鍛えた防御には、ぶんしんの使い方というのも含まれている ポン!ポン!ポン! 「ぶ、ぶんしんが本体を庇った…」 ルカリオの骨の連打がルガルガンの分身達を吹き飛ばした、その隙にルガルガンは一度距離を取る 「…で?何の使い道がないって?」 「ははぁ…なるほど…ぶんしんを撹乱だけで無くみがわりにも使うとは…」 「まだまだ、俺達の力はこんなもんじゃない」 「…それはアタシ達も同じです!」 「ルオオッ!」 【メイSide】 「はどうだん!」 「ルオ!!!」 バシュン! 「ガッ…」 ポン! またぶんしんがみがわりに……けど、今度はじっくりと時間を使って戦うことが出来る。ジャローダのおかげでルガルガンのわざは4つともわかった。ルガルガンに飛び道具はない!距離を取って戦えば、少なくとも大打撃は無い! 距離を取って…慎重にさえ戦えば…… 「!」ブルッ ……うう、どうしよう。こんな時に、おトイレに行きたくなっちゃった//// 「すなあらし!」 「ガアアアア!!」 ブワッ!!! すなあらし!?なんで!?ルカリオはかくとう・はがねタイプだからすなあらしでもダメージは受けないのに… 「すなあらしはいわタイプのポケモンのとくぼうを上げる効果がある。飛び道具が当たった時に備えて防御を固めておくのがそんなにおかしいか?」 「うえっ!?」 キリヤさんは、アタシの心を読んだかの如くすなあらしを指示した理由を教えてくれた。 ………まさか、アタシが今トイレ行きたくなったことも、バレた? 「かげぶんしん!」 ドドドドン!!! 「…」 …流石に、そんなことないよね?いくらなんでも今トイレに行きたくなったって思ったばかりだし、そんな一瞬の事を気付かれた訳はないよね? 【キリヤSide】 メイの身体が少しだけ震えたのを見逃さなかった。まだ確証は無いが、ほとんどそうだと見てもいいだろう。もしそうじゃなくても、そうなるまで時間を使えばいい 「かげぶんしん!」 ドドドドン!!! 「うぇ…また……」 「なんだ?みがわりを用意するのが気に食わないか?」 「………いえ」 表情に余裕が無くなってきたな。口数も少なくなってきた。わざわざ俺が攻撃を仕掛ける必要なんてない。焦らして焦らして、焦らし続けてやる ……メイがトイレに行きたくなっているのはもう、この目で見切ってるんだよ 続く! |