ひとりの9歳くらいの少年がウダウダを文句を垂れながら潜龍寺の山門をくぐり境内に入っていった 少年「あぁ、だるい疲れた、もうオヤツ食べて寝るぞ宿題なんかやっていられるか」 そういいながらあたりを見渡すとひとりの4,5歳位の幼女があろうことか鐘楼堂の裏で 座り込んでおしっこをしていたのである 「こらぁ、なんてとこでおしっこしてるんだ」と少年が大声で幼女に注意をした 幼女は、恥ずかしがることもなく言い返してきた「ちょっとみないでよね、エッチ!」 少年「エッチとか冗談じゃない、こんなとこでおしっこしてちゃだめなんだぞ」 「あんただってこのあいだ、そっちの方でタチションしてたでしょ」と幼女はめげることなく更に言い返してきた 「お、俺はちゃんと木に向かってしてたし、ここは俺んちの寺だ、どこでしてたっていいだろう」と少年も負けずに言い返す 幼女はオシッコが終わったのか立ち上がり 「キがかわいそう、ジュウショクさんにいいつけてやるからね!」と言い残しお寺の会館の方に入っていってしまった 「や、それだけは勘弁してくれぇ」と幼女を追いかけようとしたら高校から帰ってきた誠哲に呼び止められたのである 誠哲「斬哲そんなところで、なにをしておる?」 斬哲「あ、オヤジお帰りなさい、実は・・・」と言いかけた時に 誠哲は、雨も降っていないのに地面の一部だけが塗れているのを見て斬哲に怒鳴った 「こら、斬哲そんなとこでタチション等しおってちゃんとトイレでしなさい、あろうことか鐘楼堂に向かってするだなんて言語道断」 斬哲「違うよオヤジ、コレはボクのじゃないよ・・・ボクが釣り鐘に向かってするわけないだろう、見知らぬ女の子が・・・」 誠哲「言い訳御無用!」 斬哲「だから、コレは違うんだって、ココではしないよ」 誠哲「コレは、ココではって事は、さては斬哲よ普段から境内でタチションをしてるのか」 斬哲「ひぃぃ、ごめんなさぁーーーい」 誠哲「待たんか斬哲、晩御飯抜きじゃ!」 斬哲「ごはん抜きだけはかんべんしてくださぁい、本堂で一時間正座してきまぁす」 誠哲「やれやれ困ったものだな・・・、ん、女の子が?果て、誰だろうなぁ」 本堂で正座をしている斬哲「くうぅ、あの小生意気な女の子め今度会ったらただじゃ済まさないからなぁ、いてぇ、しびれる」と泣いていた 別な日 斬哲がいつものようにボヤキながら帰って来た時に またもや、あの幼女が鐘楼堂の裏でおしっこをしていたのである 斬哲「またお前か、なんでここでおしっこをするんだ、ちゃんと建物の中のトイレでしてくれなきゃ困るだろ」 幼女「またあんたなのね、みないでよエッチ」 斬哲「お前のせいで、こないだオヤジにこっぴどく叱られたんだぞ」 幼女「そんなのしらないもん」 斬哲「なんだよ、その目は、そんな目でオレを見るな!」 幼女「・・・・」幼女はジーっと斬哲を見ている ジーっと斬哲を見ながら、幼女は総てを出し切ったのか立ち上がり脱ぎ散らかしていたパンツを履いた 斬哲「ダメだよ、女の子がお外でおしっこなんかしたら、恥ずかしいだろ(しかも拭いていないし)」 幼女「だって、おうちまでがまんできなかったし、がまんしすぎたらボウコウエンなるってお母さんにいわれてんだもん」 斬哲「話が無茶苦茶だ、ウチの寺のトイレを使えばいいだけの話じゃないか」 そう言われて幼女はぶんむくれて口を閉ざしてしまった、その時にひとりの高校生位の少年が声をかけてきた 高校生少年「あ、いたいた、ここにいたか探してたんだぞダメじゃないか黙って離れたらお父さんとお母さんが心配してたよ」 幼女「お兄ちゃん、だってだって・・・このヒトがわたしにいじわるするの」 高校生少年「意地悪?、ここのお寺の息子さんですね、うちの妹がなにか?」 「こ、この子が、こんなとこでオシッコしてるんだ、だから注意していただけなんだ」と斬哲は証拠の水溜りに指差しをした 高校生少年「そうだったんですね、うちの妹がご迷惑をお掛けしました」 高校生少年「ほら、ちゃんとこのお兄ちゃんに謝らなきゃ駄目だぞ、ハナちゃん!」 ハナ「わたし、なんもわるくないもん、おしっこおもらしダメだもん、ボウコウエンになるんだもん」 高校生少年「ここのお寺のトイレを使わせてもらえばいいだけじゃないか、なんでお外でなんかしたんだい」 ハナ「だってだってヤスにいちゃん、ここのトイレきたなくて、したがみえてておちそうで、こわいんだもん」 斬哲「随分と言いたい放題言ってくれるじゃないか」たじろいでいる ヤス兄「こら、ハナ失礼だぞ、仕方がないだろう、ここのお寺は古いんだから」 斬哲「し、失礼な、俺だってボットンは嫌だよ、我慢しているんだ、他は殆ど水洗になっているのに」 斬哲「うちの寺だけ未だにボットンで、工事するのにお金がかかるし、もう少ししたら水洗化するからそれまで我慢しててくれ」 ハナ「がまんしたら、ボウコウエンになっちゃうのーー」幼女はとうとう泣き出してしまった ヤス兄「本当に、うちの妹がごめんなさい」深々と頭を下げて高校生少年は幼女を抱きかかえていなくなってしまった 斬哲「あぁ、なんだかどっぷし疲れてしまった・・・もうふて寝だ・・・」 それから大分経ったある日の事 あの幼女がまたもや鐘楼堂の後ろにいたのである 斬哲「あ、またお前か そんなとこでおしっこするなと何度・・・あれ?」 あれ違う、幼女はグシュグシュと泣いていたのである 斬哲「ど、どうしたんだよ、お前なんで泣いているんだ」 よくよく幼女を見てみると幼女の足が濡れており、足元には大きな水溜りが広がっていたのである 斬哲「おまえ、漏らしたのか、なんでちゃんとトイレにいかないんだ」 斬哲「トイレはちゃんと水洗になったんだから、ここに来る必要がないじゃないか」 幼女「ひっくひっく・・・、だってだって・・・・」 不思議と少し可愛らしさが見えた そこへ蓮枝がかけつけてきたのだ 蓮枝「あ、いたいた、探したわよお嬢ちゃん」 斬哲「ち、違うよ、俺、イジメてなんかいないからな」慌てふためく斬哲 蓮枝「大丈夫よ、斬哲」 蓮枝「あらら、お嬢ちゃんしちゃったのね、ほらお着換えしましょうね」 蓮枝「ほら斬哲、ボウっとしてないで本堂の方にいる御両親、肇さんに報告しにいってあげて」 斬哲「え?お漏らししてたって?」 蓮枝「もうデリカシーがないのね、違うわよ、ハナちゃん居ましたよって」 斬哲「わ、わかったよオフクロ」と言いながら足早に本堂の方に走り出した 蓮枝は濡れている女児を抱きかかえて歩き出し、少しばかり会話をした 蓮枝「ハナちゃんどうしちゃったの?」 ハナ「だってここにいればヤス兄ちゃんが来てくれるかとおもって」ぐすんぐすん 蓮枝「そうだよね、ハナちゃんはお兄ちゃんの事が大好きだったものね」 ハナ「でも、わたしちゃんとわかってるの、お兄ちゃんにはもう逢えないことを」ぐしゅぐしゅ 蓮枝「もう逢えないことはないのよ、ハナちゃんが安斎お兄さんの事をいつまでも忘れずに想っていれば」 ハナ「・・・・・おもっていれば?」ぐしゅぐしゅ 蓮枝「そう、いつも安斎お兄さんがハナちゃんの傍についていて見守ってくれるからね」 ハナ「はい・・・・あたし、ぜったいにヤス兄のことをわすれないもん」 蓮枝「強い子だねハナちゃん」 ハナ「だけど、おばちゃん、わたしぬれてるのよ、よごれちゃうよ」 蓮枝「いいのよ、気にしない、気にしない、うふふ」 それから数年が経過して・・・ ヒイロ「有難うね、レン」 レン「いいって構わないさ、今日は幸い葬儀も法事も入っていなくて広間が使えるから」 「ささ、どうぞあがって、あがって」 ハナ・ヒイロ「おじゃまします」 ハナ「先輩の家って本当にお寺なんですね、しかもここのお寺だったなんて」 ハナちゃんにしては余りにも小さい時の出来事の為に記憶が断片的にしか残っておらず、特に斬哲の事は完全に抜け落ちていて 斬哲も何故かあの日々の出来事が記憶から消えていたのである、なにかもどかしさを残して。 この二人が実は昔出逢っていた事をお互いに思い出す日が来るのかどうかは、今後の二人の出逢える回数次第である・・・。 |