CC2018年6月2日(土)駅のトイレ カランッカランッ…トイレットペーパーが大量に巻き取られる音が個室に響いた。 なびきは涙目でトイレットペーパーを巻き取り、太ももやふくらはぎについた自分の尿を拭き取っていた。 「どうしよう・・・21歳にもなってお漏らししちゃった…」 ショートパンツの股間には「おもらし」を主張する大きな扇形のシミがはっきりと浮かび上がっていた。 「こんなんじゃ帰れないよ…」 そう呟きながら携帯電話を取りだし、電話を始めた。 「もしもし…あっお母さん…あの…」 「どうしたのなびき、こんな時間に?」 「あの…駅まで迎えに来てくれない…あの…」 「駅って?どこの駅?」 「いつもの…」 「そこから歩いても10分もかからないでしょ?なんかあった?」 「あの・・・着替えも持って来てほしいの…」 「…うん?服でも汚したの?」 「うん…あの…トイレ間に合わなかった…」 「…」(母) 「…お父さん、帰ってる?あとりんごには絶対知られたくないの…」 「しょうがないわね。今、行くから待ってなさい。」 「うん、ありがとう」 なびきは仲のいい母に迎えに来てもらうことにした。 すでに何人か駅での失態を見られたが、帰る途中で、ご近所さんや地元の同級生にも見られたくなかったし、何より妹のりんごだけには絶対見られたくなかったからだ。 「あーん、気持ち悪いよ〜」 生真面目ななびきはしばらく濡れたズボンを履いていたが、トイレの中ということに気が付き、失禁で濡れたホットパンツと黄色く染まった白いパンティを脱いで、便器に座った。 ちゅぃーーーーーっ! 「まだでる…」 全部、出し切っていなかったのか、残尿がクレパスから勢いよく飛び出した。 そうこうしているうちに、コツコツという足音とともに携帯の着信音がした。 「おかあさん!ここ!」 なびきは電話に出ることなく、個室から声を上げた。 「上から入れるわよ」 なびきの母は扉の上から袋に包まれた着替えを個室に入れた。 「ありがとう、お母さん」 なびきは中に入っている下着とスカートをはいて、汚れた衣服を着替えの入っていた袋に入れて恥ずかしそうに個室から出てきた。 「・・・」 そして下唇を噛みしめながら、うつむいた。 「もう、しっかりしなさいよ。21歳なんだから。(笑)」 母はからかいながらも優しく微笑んだ。 「さぁ、帰りましょ。」 二人は駅を出て、ロータリーに止めてある小さな車に乗り込んだ。 「ふーっ・・・」 なびきは大きくため息をついた。 「もう、なびき。おもらしくらいでそんな落ち込まないの。女は仕方ない。漏れるものよ(笑)」 「でも、でも…」 「仕方ないわね…私とお父さんの出会いを話してあげるわ」 「それが関係あるの?」 いぶかしげになびきは首を傾けた。 「それが大ありなのよ。実はね、お母さんも24歳のとき、最終電車でおもらししたの…」 「えっ?」 驚くなびきだったが、母は話を続けた。 「当時は会社の飲み会も多くてね。社会人2年目だったので遅くまで結構付き合わされて…それに当時の居酒屋さんってトイレ一つしかなかったりして、もう大変。」 「そろそろ終電だからってトイレをすませようと居酒屋さんのトイレに並んでいたんだけど、ビール飲みすぎてたのもあって我慢できなくなって…結構漏れて…さ。グレーのパンツ履いていたから目立つ、目立つ(笑)」 「それでどうしたの?」 「全部漏れてなかったから、酔ったふりしながらごまかして駅まで行って…みんなもおもらしに気付いているんだけどそれに触れないようにしてたわ。そして、みんなと別れて最終電車に乗ったんだけど…座席に座っている人の目の前に、おもらしのシミでしょ…その人に気付かれて…さらにまだ全部出ていなかったら…お母さん我慢できなくなって…ちゅーって電車でお漏らししたの(笑)」 「私より3歳も上じゃん!」 なびきは母の話に少し元気になったようで少し悪戯っぽく言った。 「ホントね。今は笑い話だけど、当時は顔から火が出るくらい恥ずかしかったわ。お母さん電車で泣き出しちゃったんだけど、その目の前に座っていた人がやさしく声をかけてくれて…そのまま彼の家に泊めてもらったの…洗濯も全部してくれてさ、それにコンビニまで女性用に下着まで買いに行ってくれたのよ。」 「それって・・・」 「そう、今のお父さん。そして、私は胡桃流美になって、翌年、なびきが生まれたのよ。」 「ふーん、お父さん、やさしいんだね。」 「お母さんの魅力かな(笑)。なびきは誰も助けてくれなかったんでしょ?女としてはお母さんの勝ち!なんてね(笑)。」 流美は舌をだして笑った。目じりにいくつかのしわができてはいたが、その笑顔はまだ少女のあどけなさが残っていた。 「もう〜24歳でおもらしして何が勝ちよ〜(笑)」 車の中は大きな笑いに包まれた。そして、エンジンがかかり、ゆっくりと駅前のロータリーから出ていった。 |