キャストラウエスタン ノワール 第5話 決戦A 町の入り口付近 「ジェイク!どうして!」 アンジェリカは涙混じりの声でジェイクに叫んだ。 「アン!冷静になれ!」 涼子にたしなめられるが、ジェイクの顔を見ると父親のことや昔のことを思い出し冷静でいられないアンジェリカだった。 「うるせー!」 バリバリバリッ! 若い女は速射砲を二人に向けて撃ち放った。 若い女は露出度の高い服を身に着けていたので、その白い腹回りが見えていた。 その腹には大きな銃痕が残っていた。 「ミリア、その辺でやめておけ。俺様の首を獲ろうなんざ、どれほど身の程しらずな奴なのか顔を拝んでやる。」 グレッグはそういうと涼子に向かって叫んだ。 「ノワール涼子!正々堂々と一騎打ちを申しでる!」 グレッグはそう言って前に出た。 しかし、その後ろでは速射砲が狙っていた。 「こんなの卑怯です!」 アンジェリカは前に出ようとする涼子の肩をつかみ涼子を止めた。 「まともな一騎打ちなんてありえません、速射砲でミンチにされますよ!」 アンジェリカは必死で涼子を止めた。 優しい笑顔で涼子は応えこう続けた。 「俺を誰だと思ている?」そう言って手を振り払いグレッグと対峙した。 「ほうぉ、いい度胸したねーちゃんじゃねぇか。」 そう言ってホルスターに手を置いた。 「勝負だねーちゃん。」 イヤらしい笑いをグレッグは浮かべた。 その時、またカミナリのような音が響いた。 速射砲が涼子に向かって放たれた。 涼子は転がるように回避したが、それを狙いすましたかのようにグレッグが銃を抜いた。 バーン! 銃弾は涼子の右頬をかすめた。 「はん?動きだけは素早いな!ミリア、足ぐらいつぶせ!」 グレッグはミリアに檄を飛ばした。 「的が近すぎて狙いが難しいんだよ。こいつは一人の人に狙いを定めるもんじゃないからな。人間なんざ、コイツに当たればミンチだよ!」 ミリアは狂ったような笑いを浮かべ応えた。 「さぁ姉ちゃん、どうする?今、助けを乞えば命だけは助けてやる。その代わり俺が飽きるまで俺のおもちゃになれ。」 グレッグは下品な微笑みで涼子に銃を向けた。 「ふざけんじゃ、ねぇ。てめぇのチンポくわえるくらいなら、ミンチになってオオカミの餌になった方が人間らしいぜ。」 そう言って銃口をグレッグに向けて引き金を引いた。 「何!」 グレッグは慌てて引き金を引いたがその瞬間、数発の銃声が響き渡った。 一瞬遅れたグレッグの弾丸はわずかに逸れ、転がるように打ち込む涼子の右足をとらえた。 そして涼子の弾丸はグレッグの左肩を貫いた。 さらに涼子は引き金を引いた。 グレッグをとらえたはずだった。 カチャ! 「何!」 涼子の銃の弾が切れてた。 「涼子さん!」 アンジェリカが二丁拳銃を速射砲に向けて援護射撃をしながら走ってきた。 しかし、そこにジェイクの正確な射撃が襲った。 アンジェリカは胸を撃たれて倒れた。 マシンのように冷たく、そして無表情のままジェイクがアンジェリカを撃ちぬいていた。 荒野に倒れこむアンジェリカ、それを見て涼子が叫ぶ。 「アン!」 しかし、涼子の前にはグレッグが立ちはだかった。 「涼子!終わりだな。」 そう言ってグレッグは涼子に近づいてきた。 ミリアは速射砲の砲座でサディスティックな笑い声をあげていた。 グレッグは涼子の前に立ち、銃を構えた。 「どうだい?気が変わったか?俺のおもちゃになれよ。」 グレッグはいやらしい顔つきで繰り返した。 「ふざけんなって言ってんだろ!」 そう言うと持っていた銃をグレッグの顔面に投げつけ、タックルをするように銃を持つグレッグの右手に飛びついた。 「なんだ、このアマ!」 必死に振り払おうとするグレッグだがそのまま二人はもんどりを打って転がった。 「ちくちょー、これじゃ速射砲で撃てねぇ!」 ミリアはいらだった。 そして涼子はグレッグの銃をグレッグの腹にあて引き金を引いた。 「うっ!」 グレッグのうめき声とともに彼の体重が涼子に掛かってきた。 それを見て、ジェイクが銃を構えようとしたとき、ミリアに向けて3本の矢が飛んできた。 ジェイクは素早い反応でポンチョを投げ、矢をからめとった。 そして、矢の飛んできた方向へ正確な射撃をした。 馬が一頭転がった。 そして、弓矢をもったカナが荒野に叩きつけられた。 「リナ、あとは頼んだよ!」 からめとったポンチョの死角からリナがトマホークを振り下ろしながら降ってきた。 「えーい!」 リナの雄たけびが荒野に響き渡った。 「銃を持っていては間に合わんか・・・」ジェイクはとっさにそう判断し、銃を捨て左手でトマホークを持つリナの手首を捉え、右手で流すように倒した。 「何!」 リナが気付いた時には背中から叩きつけられていた。 「げほっ!」 背中から強くたたきつけられ、むせるリナだが、ジェイクは容赦なく攻撃をつづけた。 そのまま革のジャケットをつかんでリナ頭を地面に数回叩きつけ、ブーツからナイフを取り出しリナの胸を躊躇なく貫こうとした。 「ひっ!」 リナは恐怖で身が凍った。 シューーーーーーっ! リナ股間からは尿が意志とは関係なく漏れ出していた。 ショートパンツには扇形のシミが広がり尻の下には大きな水たまりができた。 しかしそれと同時に、「痛い!」というミリアの悲鳴が聞こえた。 その声に過敏に反応したジェイクはミリアの方をみると、一本の矢がミリアの背中を背後から貫いていた。 そして複数の矢がミリアめがけて飛んできた。 「ミリア!!!」 ジェイクは身を挺してミリアに向かって飛んできた弓矢を受けた。 ジェイクは倒れるようにミリアをかばった。 振り返るとインディアンの多くの軍勢がジェイクたちを取り込んでいた。 「パパ!」 リナは声をあげた。 「リナ、カナ、もう少し落ち着いて行動するように言ってるだろ・・・まぁ今回はお前たちが飛び出してくれた結果、よかったみたいだがな(笑)。うん?リナ?どうした?」 悪戯ぽくインディアン酋長はリナを見て笑った。 「あっ!これは・・・あわあわ・・・」 リナは慌てて股間を隠した。 「おい、おい、インディアンの娘がカッコ悪いなぁ(笑)」 「おにーちゃん!」 リナはケータに失禁をからかわれて顔が真っ赤になった。 「お父さん・・・」 「ミリア」 ジェイクは倒れこむようにミリアを抱きしめた。 「お父さん?」 アンジェリカがその声に反応し、ゆっくりと立ち上がった。 「アン!」 驚いたような声をあげた涼子。 アンジェリカは保安官バッジを涼子に見せてほほ笑んだ。 「お父さんが守ってくれたようです。さすがに衝撃で気は失いましたが・・・」 よく見ると保安官バッジの真ん中に弾丸が突き刺さっていた。 ジェイクの正確な射撃のおかげで助かったのだろう。 ゆっくりジェイクの方に近づき、銃を構えた。 「ジェイク・・・どうして?」 銃口を向けたままアンジェリカは立っていた。 「立派になったな。アン。その銃で俺を撃ちぬいてくれ。ミリアはもう死ぬ。胸を貫かれている。こいつがいなくなれば、俺にもう生きる意味などない。」 「どういうことなの?ジェイク!教えて。なぜ、あなたがお父さんを殺さなければいけなかったの?教えて!」 アンジェリカは語気を強めて聞いた。 「あの日な・・・人質とされていた女な・・・グレッグとグルの女・・・ミリアは俺の娘だったんだ。ずっと会いたかった一人娘・・・。俺は迫られた。娘を救うか、仲間のマイクとお前、アンを救うか・・・でもな・・・マイクは勝負には非情だった。マイクはグレッグのグルだとわかり、ミリアが俺を迷わせているとわかった瞬間、ミリアを躊躇なく撃ちやがった・・・。マイクの判断は正しかった・・・それはわかる・・・しかし、娘が殺されることに耐えられなかった。気が付いたときには俺はマイクの腹を撃ち、そしてお前の前でマイクを殺した・・・。ミリアは下半身不随になったが一命をとりとめた。ミリアはグレッグたちと行動を共にすることですでに壊れていた。 クスリもやっていたようだった。俺はお前とマイクを裏切り、ミリアを選んだ時から地獄を歩くと決めたんだ・・・」 ジェイクはミリアを抱きしめ語った。 「・・・・・」 アンジェリカは言葉が出なかった。 「・・・お父さん・・・天国ってあるのかなぁ・・・はぁはぁ、またグレッグと遊べるかなぁ・・・お父さん・・・」 ミリアはそう言って息を引き取った。 ジェイクは強くミリアを抱きしめアンジェリカに言った。 「アン!お前も死んでくれ!」 そう言ってホルスターに手をかけ、アンジェリカに銃を向けた。 とっさにアンジェリカは二丁拳銃を放った。 見事にジェイクの腹を捉え、ジェイクはミリアに覆いかぶさるように倒れた。 「えっ?」 しかし、よく見るとジェイクの右手には銃は握られていなかった。 アンジェリカはジェイクが銃を抜かなったことに気付き憤りを覚えた。 「どうして!ジェイク!」 アンジェリカは悲痛な声をあげた。 「ありがとう・・・これで・・・地獄で娘と仲良く暮らせる・・・マイクはどっちかな・・・なぁマイク?アン、つ、強くいき・・・ろ・・・」 そう言ってジェイクは息を引き取った。 アンジェリカは呆然と立ち尽くし、しばらく現実を受け入れないでいた。 「さぁ・・・引き上げるぞ!」インディアンの酋長が皆を率いて集落に向かい始めた。 日が傾き始めたが、アンジェリカはジェイクの前に立ち尽くしていた。 「行くぞ!」 そこへ涼子が脚を引きずりやってきて、アンジェリカの右肩を叩いた。 一瞬、ためらいを見せたアンジェリカだったが、迷いのない表情になり「ハイ!」と力強く答えた。 二人は町へ帰っていった。 続く。 |