美黄流中学二年春。


愛子 「あら…?メグミどこいったのかな…?」

お昼休み、メグミを訪ねた愛子だがメグミ不在の机の上に一冊のノートがあった。
メモリアルと書かれたそのノートを何気なく開いてみると
中には数十ページにもわたるポエムが書いてある。


メグミ 「こらっ!!勝手に見るな!!」


トイレから戻るや否や大声を上げた。


愛子 「わ! メグミ、ポエムなんて書いてんの〜??」

メグミ 「うるさい!人の勝手だろ!」

愛子 「むふふ、意外だねぇ〜」



ポテトチップボーカル担当、染内 恵。 通称メグミ。
本編の主人公になる彼女、高校生の今でもバンドポテトチップを組んでファンも多数おり
将来バンドデビューの未来がある。(デビューメンバーは今とは異なる)


そんな彼女の初期メンバーバンド結成の物語である。










〜〜数日前〜〜


佑香 「どお〜?」

愛子 「うん!これ美味しいよ! ゆかっち考えたの?」

佑香 「わ、良かった〜♪ うん、でも細かい分量は美雪ちゃんのアドバイスだけどね」


佑香邸に招かれた愛子は佑香お手製のクッキーを試食していた。


愛子 「そういえばさ、さっき来る時楽器の音聞こえていたけどゆかっち弾いていたんだ?」

佑香 「あれ?防音扉ちゃんと閉まっていなかったのかな…」

佑香 「お父さんの影響でギターを練習してるの」


愛子 「へぇ〜 初耳だなぁ… 前からちょっと弾いているのは知っていたけどあんなに弾けるんだね」

佑香 「良かったら見てみる?少し狭いスタジオだけどネ」

愛子 「おお〜見る見る〜見てみたい〜!」


褒められた佑香はちょっぴり嬉しくて諭吉愛用の練習スタジオを初めて愛子に紹介した。

諭吉の友人も使用する為少し狭いスタジオにはギター、ベース、ドラム、そしてマイクスタンドと
いつでも演奏可能な状況に備えられていた。


愛子 「わあ〜〜〜…あたしあまり詳しくないけどなんかすごいね〜…」

佑香 「良かったら音出せるよ。愛子ちん、少し弾いてみる〜?」

愛子 「うん、弾いてみたい!」


興味津々と愛子が手に取ったのはベース。


佑香 「この楽器でいいの?」

愛子 「うん、なんか簡単そうだし見た目かわいいしネ!」


決して見た目が可愛いとは言えないが愛子の潜在意識がベースを選んだのであろう。


佑香 「じゃあね、ここ押さえてこのピックで弦を弾くの。一定のリズムを保ちながらね」

愛子 「う…うん」


アンプを通しボン!と奏でた音は心に響く重低音。佑香の指導で連続で弾いてみる。

ボンボンボボン!ボン!ボン!



ポテトチップベース担当、逢坂嬢 愛子。
ひょうきんでムードメーカーの彼女。案の定愛子は初めて弾いたその重低音に心を奪われた…。















メグミ 「まあ、上がってくれ 今ジュース出すからね」

3人 「おっじゃましまぁ〜す!」


本日は美雪、佑香、愛子の3人でメグミの家へ遊びに来ていた。
音楽はいつもメグミの大好きなバンドの曲が流れる。


佑香 「あ、そうだ美雪ちゃん!この間のクッキーレシピ上手くいったよ〜」

美雪 「あ、ホント!?良かったぁ〜」

佑香 「毒味は…愛子ちんだけど…うふふ」

愛子 「まあゆかっちなら何作っても美味しいけどね〜     おや…?」


メグミがジュースを取りに行って3人で雑談していると愛子は見覚えのある色のノートを発見。
ちょっぴりだけ見えていた端の部分を引っ張るとやはりあのポエムノートであった。

愛子 「ねね、チミたち!面白いものを見せてあげよう!♪」



メグミ 「こんなもんか…。」

お盆にそれぞれの好みのジュースを乗せバスケットに入ったお菓子を添える。
トン、トン、トン、階段を上り部屋に戻るメグミ。


メグミ 「おまたせ〜    …ん    ん…?   あっ!!

そこには3人でメグミのポエムをじっくり眺める姿があった!

美雪 「あ、おかえり〜メグミ」

愛子 「やっぱ何度見ても顔が赤くなっちゃうなぁ…むふふ」

メグミ 「わあああ!!! 見るなって言ってんだろうがっ!! やめれ〜〜!」


お盆をひっくり返そうになるが無事セーフ。少し荒くお盆を置き慌ててそのノートを奪うメグミ。
顔が真っ赤で愛子を睨みつける。

美雪 「素敵なポエムを書くんだね〜驚いちゃった」


メグミ 「うるさいっ!」


愛子 「メグミさんてぇ〜結構乙女なんだね〜」


メグミ 「うっさい!うっさい!!」


佑香 「………」



メグミ 「くぅ…」


半分涙目のメグミ。


佑香 「……すごいよ…」


メグミ 「…!」


佑香 「すっごいよ!!!メグミ!! これって絶対に才能だよ!」

メグミ 「いや……ただ…思い浮かんだから書いてるだけだよ…」

佑香 「私も書くけど…ここまで感情を表現できる詩なんて書けないもん!感動しちゃった!」


なんと他の二人より格段にベタ褒めの佑香。そしてメグミより「多く」涙を浮かべている佑香。
本当に感動した様子だった。


メグミ 「そ…そうかな… はは」


悔しい恥ずかしさから嬉しい恥ずかしさに変わりつつあるメグミ。


佑香 「これさ、形にしてみようよ!メグミの音楽にするの!」




メグミ 「え…?」


愛子 「お!それありかもねっ!この間ゆかっちの家に行った時機材すごかったよ」

佑香 「うんうん、楽器なら私の家で用意できるからこのポエム形にできるよ!」

美雪 「わぁ、なんかすごいね!」



ポテトチップギター担当、下級生 佑香。 通称ゆかっち。
父親諭吉の影響で幼い頃からギターを習得。普段は自分が書いた詩を見ているが
他人が書いた詩を見るのは初めて。そしてその感動はバンド結成の引き金にもなる。



この時、

部屋には1週間前に発売されたばかりの
メグミの大好きなバンドの新曲が流れていた……。












メグミ 「う…う〜〜ん……
このポエムが曲になっちゃうのかぁ…」

愛子 「いあ、何気に面白そうだよメグミ!こんな機会ないって」

メグミ 「じゃあ…まあ1曲だけなら…」


照れくさそうに自分のポエムノートをめくり、その詩をじっくり眺めるメグミ。


メグミ 「おし…じゃあ1曲頼もうかな!

諭吉さんにこれ見せるの恥ずかしいけどね!」



自身のお気に入りの詩を見て佑香の方を見る。


佑香 「やだなぁメグミ。 お父さんにこれ見せないよ」

メグミ 「へ…?」


佑香 「自分たちで作るのよ!バンド組んでさっ」


メグミ 「ま…まて!」


愛子 「むふふ、そうくると思ったよ、ゆかっち」


メグミ 「自分たちのバンドだって…!? 

こう見えても私、歌も歌えないし楽器なんて全く扱えないよ!?」



愛子 「メグミ知らないかもしれないけどゆかっちのギターかなりうまいよ

それに美雪はピアノ弾けるからキーボードもできるし!」


美雪 「えへへ」

佑香 「うんうん!」

愛子 「んでもってあたし、この間ゆかっちの家でベース弾かせてもらったけど

あれ以来忘れられなくてね〜本格的に勉強しようと思っていたところなんだ」




メグミ 「うん…?  ちょっとまってよ…… と、言う事は…」



愛子、佑香 「そう!メグミがボーカルだねっ!」



メグミ 「ええええ〜〜〜!? 

いやいやいや、絶対に無理だ! やだっ!!」



愛子 「だってメグミ不器用でしょ〜?楽器とか絶対に無理だってば。
なおさらドラムなんて100%無理だし」



佑香 「それにそのポエム、メグミの作詞だからやっぱりメグミ本人が歌わなくちゃ!」

佑香 「その方が感情移入だってきっとうまくいくと思うしネ」



メグミ 「え〜〜〜〜…… う〜〜〜ん… ぐむ〜〜〜〜…」


音楽は割りと好きで好きなバンドだっているメグミだが、歌うのはカラオケ程度で
まさか自分が自分の曲を歌うとは夢にも思っていなかった。




メグミ 「いやぁ〜〜… 少し考えさせてくれ… 今日一晩くらい…」




いつもは先陣切って物事を決める性格だが珍しく決断が鈍る。

前からギターを人前で演奏してみたかった佑香と、ベースの面白さに気づいた愛子は
バンドを組む話にはもちろん大賛成であったが…


佑香 「ね、美雪ちゃんも大丈夫だよね?」


美雪 「えっと… ごめんね! 数人で演奏合わせるの苦手で…」

美雪 「それに今、漫画のコンテストがあって…」



愛子 「ええええ〜〜〜!?なんでよぅ!美雪!さみしい事言わないでよ〜!」

佑香 「美雪ちゃん…無理なの…?」

美雪 「えへへ…でもちゃんとサポートするよ〜!わかんない事あったら手伝うよ」

愛子 「むぅ〜… そっかぁ…でも気が向いたら組もうね」

美雪 「うんうん!」


美雪はこの時漫画に凝っており漫画家への志が強かった。
その代わり自身の持っている音楽知識をバンドのサポートという事で
応援する形になった。



美雪 「じゃあまた明日ね、メグミ」

佑香 「またね!メグミ ご馳走様でした」

愛子 「じゃあねぃ〜明日返事聞かせてよねメグミ!」



こうして3人は明日のメグミの返事待ちということで解散した。





その夜…





その夜もメグミの部屋には新曲が流れていた…。







メグミ 「バンド…かぁ…」


机に向かい今日の話を思い出していた…。

だがそんなメグミも今まで色々想像していた事を思い出した。

たしかに人前はカラオケくらいの経験しかないメグミだが、密かにボーカルというスポットライトの当たる
居場所に憧れがあった。

何度もその好きなバンドのボーカルのポジションを
自分に置き換えて思いっきり歌っている自分を想像していたり。

今はまだ中学二年だけどこの先もしかしたら
高校生になってそんな出会いや機会があるかもと思ったりしていた時期もあった。

初めて自分の大好きなバンドの曲を聴いたとき、そのかっこ良さに憧れ
自分はもしかしたら芸能界に入るんじゃないか?と淡い夢も見ていたりした。


そんな中、

リピートで流れる曲を聴いているうちにうとうと眠りに入るメグミ…。

机の上に腕枕をして寝てしまった…。
























しばらくして…






































メグミ 「あっ!!!」















突然の大声とともに飛び起きるメグミ!



メグミ 「まずい!!!」



何事かと飛び起きたメグミだが…なんと!

おねしょ一歩手前で飛び起きたのだ!!


メグミ 「やあん!!間に合わないっ!!」



出る数秒前の状態でもうトイレに走っても100%間に合わない状況で
近くにあった袋を手に取った!

そしてズボンとパンツを下ろすと…





なんと!


その袋におしっこをしてしまったのだ!









危うく部屋がおしっこまみれになるのを防いだメグミ…

その夜はすぐお風呂に入り早めに就寝した…。




そして翌日
















メグミ 「ゆかっち! 今日学校終わったらゆかっちのスタジオ借りれる!?」

愛子 「おおお!という事はメグミ、歌う決心付いたの!?」

メグミ 「ああ、もちろんだ!作曲なんてした事ないから美雪、ゆかっち、アドバイス頼むよっ」

佑香 「うん!もちろんアドバイスもするし、スタジオも今日OKだよ!」

美雪 「ピアノでメロディ作ってあげるから任せてね!」




学校で顔を合わせるとすぐその返事をみんなに伝えた。

一晩経ちバンドの結成を決意したメグミ。
やはり何度考えても自分の気持ちに嘘はつけなかった。

ただ、ボーカル任命は意外の事で、でもその気持ちも自身の歌を、自身の考えた詩を
みんなに聞いてもらいたいという新しい大きな目標がメグミの迷いを消した。


メグミと愛子、この二人は美雪や佑香に比べるとまだまだ初心者だが
4人で難なく乗り越えられる壁だろう。

残念な事に美雪は初期メンバーから外れる事となったが後にキーボードとして加入する。



こうして3人+サポート1人の「バンド」が結成された!








愛子 「お〜〜〜し! となるとぉ〜… 次に大事なことは…」


佑香 「うん!」


美雪 「これも肝心だね!」


メグミ 「うむ…」










メグミ 「バンド名は… 


ポテトチップ だっ!!」








美雪 「いいね!」

佑香 「うん、かわいい〜」

愛子 「ん〜〜? なんでポテトチップなん〜?」




メグミ 「ふっふっふっふ………」






おしっこまみれの大惨事から救ってくれたありがたい袋様。

口が裂けてもバンド名由来を言える訳が無いメグミでした。










★CASTLAGE掲示板★ 投稿日:2018年 9月17日
投稿者:ほろほろさん