高校生活も来年で終わってしまう彩。
一つだけ悔いが残るとすればそれは憧れのあの人に告白していない事だ。

「残された高校生活をあの人と過ごしたい!」

そんな気持ちが大きく膨らみついに憧れの彼に告白を決意。

前夜に何度も練習した言葉を思い浮かべて彼を呼び出し倉庫で待つ彩。
普段はケンカばかりの彩だがこんな時くらいは恋する女の子に戻っても罪は無いだろう。



下校時間も過ぎ空も薄暗くなり始めた頃、彼は彩の待つ倉庫にやって来た。


彼 「よ、どしたの 珍しいね呼び出しなんて」


彼の声を聞いた途端急に胸が高鳴り無意識に顔が赤くなる…。
自分でも信じられないくらいに緊張しているのが分かる。


彩 「ご…ごめんね、 お…お話があって…」


彼 「うん…」


告白という想いにどうしても言葉が詰まってしまう彩。


彩 「あ… あのね… 聞いて欲しいことが…あるの」


恥ずかしそうに語る彩を見た彼は瞬時に告白だと悟った。
そして無言でうなずき彩に視線を送っている彼はその言葉を待っていた。


彩 「あ…あの… 私ね…」


彩 「 前から… あ…貴方の事が… 」



「ガチャン!!」


まさに彩の告白最中の出来事だった。


彼 「…!?」  彩 「……」


なんのためらいも無く突如響き渡った鈍い音は二人の空気を一気に変貌させた。


彼 「ちょっと待った!まずいぞっ 高木が鍵かけていったっぽいな!」


彩 「えええ…!?」


この時間帯の倉庫に近づく生徒はほとんどおらず高木先生の鍵当番の日課で
17時を過ぎれば普段この倉庫は鍵の掛かった無人の倉庫と化していたのだった。

そんな無人密室倉庫になるとは夢にも思わず、告白場所として選んでしまった彩。
すぐさま扉をチェックしたがもちろん扉は開かない。

他の出口を探すも10pほどの小窓があるだけで
小さな倉庫を見渡すのに時間なんて全くかからなかった…。


告白どころじゃないような状況で一気に現実に戻された彩!





二人で声を出し助けを求めたが反応は無い。

そして交わす会話も少なく1時間も経過した頃彩の振るえに気付く彼。


彼 「小粒…?具合悪そうだけど… 寒い…?」


彩 「う…ううん、大丈夫。なんでもないの それよりごめんね…こんな事になって…」


どうやってここから出ようかお互い案を出し合う。
気が付けば時間は更に経過していた…。


彼 「…?」


どうも上の空の彩に彼は気付く。




彩の額には密室で出れない焦りとは違う焦りの汗が流れていた…。

彩 「  はぁ…   はぁ…  」

どうにか出れないものかとウロウロしている彼。
そして彩はついに意を決して彼に打ち明けた。


彩 「ど…どうしよう… 私…、     お手洗い…行きたい…」


彼 「え!? まさかと思ってたが…」


彩 「ちょっと… もうキツイ… かも… はぁ…はぁ…」


彼 「なぜもっと早く言わなかったんだ〜」


彩 「う…うん…」


それまでは悟られないようにと最小限での震えで我慢し続けていた彩であったが
彼にトイレへ行きたい気持ちを伝えた開放感からか
急に全身で生理現象を耐える仕草を表した。

そう、もう身体を動かして耐えていないと危険な状態だったのだ。


彩 「 ん… はぁ… はぁ… はぁ…   んっ… 」


だが彼の前であからさまに我慢をする姿は見せたくない。ましてや好きな人なら尚更。


彩 「……」


無言のまま彼から少し離れ身を隠した彩は生理現象の為身体を小刻みによじる。

声を殺した彩の微かな声と、身をよじらせている服の音は
この静かな倉庫には大きすぎるほどの音で彼に伝わっていた…。


彼 「くそっ!開け!扉めっ!  この!!」


もう何度試したであろう開かない扉を懸命に引く。

小窓から入る光も徐々に暗くなり部屋の明かりも自然と暗くなっていく。


彩 「はぁ… はぁ… ね、ねぇ…」





彼 「ハァ、ハァ、 うん…? どうした小粒」


彩 「そこから… はぁ… はぁ… 私の姿… 見える…?」


彼 「い…いや… 見えてないよ。 大丈夫」


彩 「……」


我慢している姿を見られたくないのだろう…と思った彼は少しでも安心感を与える為彩に気を使う。
何も出来ない自分にしてあげるのはこれくらいなのだから…。


彩 「こ………」


彩 「こっち…来て…」


彼 「 ………。  …え??」


全く予想だにしない彩の言葉に正直驚いた。


彼 「え…? だ…大丈夫なのか…? その…」


彩 「でっでも! 私の姿は見ないでねっ!」


不可解な言葉に動揺を隠せない彼は戸惑いながら見えないようにと彩に近づく。




彼女の病名は暗所恐怖症。

見られたくない気持ちとそばに居て欲しい気持ち
複雑な想いが彩の心の中で葛藤する。

普段は気の強い彩、一番の悩みの種であった。


彩 「そ… そこから 動かないで… ね…」


彼 「あ… あぁ…」


それは自力で脱出することを諦め救助を待つという意味でもあった。


すでに我慢の限界に近い彩に追い討ちをかける状況は
「その時」が来てしまう運命を彼も悟っていた…。




そしてその生理現象とは…



彩 (おしっこしたい…)01    彩 (う…う○ち したいよ…)02





我慢をし続けてから約2時間。

強い生理現象と極度の暗所恐怖症の中で彩は頑張り続けた…。 そして…、


「小」限界 →01     「大」限界 →02    




女性の排泄音を初めて聞く彼。

微かな泣き声で全てを把握する。無言で彩を慰めてあげていた。


彩 「…」


彼 「…」


暫くの間二人に静かな時間が流れた。


そして着ていたシャツをそっと彩にかけてあげると一瞬目が合う。

すぐさま目を反らした彩は数秒の沈黙が続いた後 少し照れた顔で微笑み、

「…ありがとう」

と、涙で真っ赤になった瞳で彼を見つめながら小声で呟いた。




この10分後に救助された二人、携帯を持っていた事に気付くのは扉が開いた瞬間でした。